食品製造業 × 実務経験 × 中小企業診断士
「社員なら当然やるべき」
「管理職は会社を優先すべき」
「給料の3か月分は働け」
会社員時代、経営層からよく聞いた言葉です。
これらは“規範”としては正しいのですが、前提があります。
それは、「社員が会社に対して高い貢献意欲(モチベーション)を持っている場合にのみ成立する」ということです。
会社員は、会社が生み出した利益から給料を受け取ります。
業種や業務内容によって賃金差が生まれるのは当然ですが、「平均年収」だけで比較すると不満が生まれやすくなります。そして、その不満を抱えたまま働く人は、社員であれ管理職であれ、前向きに動きません。
その結果、表面上は“仕事した風”でやり過ごすようになります。とくに勤続年数が長いほど、会社の癖、年功序列と社内政治を熟知しているため、うまく立ち回り、さらに元部下が上司になっても抵抗なく順応するといった行動が生まれます。
今回は、番外編として有効な組織の在り方について事例をご紹介します。
【事例】
従業員300名規模の食品工場。
M&Aを経て複数社が合併し、新会社が設立されました。
しかし、旧社ごとに歴史・文化・理念が異なっていたため、社員の価値観や仕事の進め方は一致しませんでした(表面上は協力姿勢を見せていても、実際には 「旧社のやり方には口を出さない」 という暗黙の了解があり、シナジーはまったく生まれていませんでした)。
原因は、旧社への“愛社精神”が変化を拒んだこと。
新会社の設立に不満があるなら退職しているはずですので、残っているということは、仕事への愛着があったと考えられます。
その愛着が、新しい会社で慣れたやり方が変わることへの抵抗として現れます。尤も表面上は協力します。ただ裏では何もしない。そして指摘されると理由を並べて煙に巻くという行動につながりました。
私は経営企画室に所属しており、以下を提案しました。
・給与体系・就業規則を新会社として統一すること。
・旧社の若手を集め、新会社の理念・ビジョン案を作成すること。
しかし、結果は「余計なことをするな」と一蹴。
理由は、経営層が親会社の顔色をうかがっていたためです。
後日談として、数年後に給与体系・就業規則の統一されました。また若手中心のビジョン策定も実施されました。理由は、親会社からの“指示”。新会社設立から数年経っても改善が見られず、ようやく親会社が動いたためでした。
【教訓】
組織は“環境変化に合わせて”視点と役割を変えなければなりません。
・安定期:階層型・役割固定のメカニスティック組織が有効
・変化期:柔軟で役割を超えた有機的組織が必要
最適な組織構造は状況によって変わります。
今回の事例では、新会社設立という“変化期”があったにもかかわらず、経営層が安定期のように役割固定を維持しようとしたため、対応が遅れ、組織が動かなくなっていました。
このような変化期に必要なのは挑戦。
「ひとつ上の視点」「役割を超えた行動」だと考えます。そして環境に合わせて組織の構造を柔軟に変えられるかどうか?ここが、改革の成否を分けると思います。