食品製造業 × 実務経験 × 中小企業診断士
「それは自分の仕事じゃない」
「個人業務は標準化できない」
「頭を使う仕事だから小休憩が必要」
間接部門で、こんな声を聞いたことはありませんか。
間接部門は、工場のような集団かつルーチン化した業務ではないため、“自分にしかできない”というプライドや暗黙知(属人化)が潜んでいることがあります。
今回は、間接部門の属人化が原因で残業が常態化していた経営企画部門を立て直した改善事例をご紹介します。
【事例】
3名チームの経営企画部門で起きた「残業の常態化」。
月初に予実管理の差異分析を行うため、わざわざ全職場にヒアリングを実施し、細かい数字を積み上げ、さまざまな角度から分析していました。
そして、分析に応用した考え方やグラフは、ケースによって見え方が変わってきますので、”これならば差異が見える”というものを、都度選んで報告書が作成されていました。
確かに細かく分析すれば精度は上がります。
しかしながら、その分、自分だけではなく、全現場責任者の時間も奪うことになります。
さらに、分析が細かくなるほど報告資料も長くなりますので、資料作成にも時間がかかる。その結果、残業が増えるという悪循環に陥っていました。
しかも皮肉なことに、経営層は、資料が長くなるほど、“どこが問題なのか”が見えなくなる結果、費用対効果は著しく低い状況でした。
原因は、”自己満足の属人化(暗黙知)”。
本来は、“全体の傾向”が掴めれば十分でしたが、担当者はこれまで誰からも指摘を受けることがなかったため、「全部を細かく分析すること、違いを見せることこそが自分の価値が示せる高いスキル」との固定観念が根強く浸透していました。
そこで私は、分析の“型”を決めることから始めました。
例えば以下の通りです。
・得意先は企業別ではなく「業種・業態」で分類
・生産は「数量」と「商品軸」で整理
・売上の上位80%だけを重点的に確認
・細かい分析は“必要な時だけ”行う
つまり、まずは全体を掴むことを最優先し、そこから必要な部分だけを深掘りするという流れに変えました。
報告がパターン化されることで、経営層は概況が把握しやすくなり、担当者の残業もゼロになりました。
そして、それ以上に「自分にしかできない仕事」は、実は“型がないだけ”だったことが明らかになりました。
【教訓】
“自分にしかできない”と思っている人ほど、残業が多い傾向があります。
プロ意識があるのはとても良いことですが、
「その仕事は会社にどのような価値があるのか?」
ここを考えないと、ムダな業務が正当化されてしまいます。
慣れた仕事は楽です。
しかし、楽だからといって価値があるとは限りません。
そして属人化が放置されると、会社の利益も、組織の成長も止まります。
だからこそ、暗黙知を形式知に変える“型づくり” が必要になります。
そのためには、時には嫌われる覚悟で、変革を進めることも求められます。