食品製造業 × 実務経験 × 中小企業診断士
「5Sなんて意味が無い」
「5Sのせいで残業が増えた」
「5Sをやったら作業性が落ちた」
現場でよく聞く声です。
この意見、私は半分正解で、半分間違いだと考えています。
確かに、長年の慣れで身体が覚えている動作は、環境が変わると一時的に効率が落ちます。また、職場がきれいになっても、作業そのものが変わらなければ生産性は上がりません。
つまり、5Sは“ゴール”ではなく、クレーム削減や効率改善のためのスタート地点にすぎません。それが目的になった瞬間、その意味は失われてしまいます。
今回は、なかなか進まない5S活動を進めた事例をご紹介します。
【事例】
従業員200名規模の惣菜工場。
新任工場長が「5Sを徹底する」と宣言したものの、現場は冷めた反応。
「どうせまた元に戻る」
「やった風で終わる」
何度も取り組んでは、挫折してきた過去があるため、誰も本気になっていませんでした。
原因は、「5Sをやる意味」を誰も理解していなかったこと。
そこで私は、次の2つを行いました。
① 5S“だけ”では良くならないことを伝える
「5Sをすればクレームが減る」「効率が上がる」
よく聞く話ですが、これは机上の空論です。
大事なのは、5Sを通じて“他者視点で管理する心”を育てること。
例えば、トイレ掃除が工場のレベルを映すと言われるのも、「嫌がる仕事を進んでやる姿勢」が組織の質を表すからです。
5Sも同じで、きれいにすること自体が目的ではなく、きれいに“保とうとする心”が価値を生みます。
この点を徹底的に伝えました。
② 5Sで“何を得たいのか”を明確にする
現場は、5Sよりも、目の前の課題であるクレーム削減や効率アップを最優先します。
これは、予防措置が機能していない典型例と言えます。
そこで私は、まず事後対応を片付け、時間的余裕を作ったうえで「事故を未然に防ぐための5S」を提案しました。
さらに、「今やらないと、また事故対応に追われる未来が来る」と強く訴えました。
そういった指導を行った結果、職場環境は改善しましたが、成果としてクレーム削減や効率アップが改善されることはありませんでした。
そして、数字に表れる結果が得られなかったことが、状況を悪くし、実際に5S活動を推進してたチームはモチベーションが下がり、推進しなかったチームは「予想通り。無駄な労力を使わなくて良かった」と5Sを引き続き推進しようとはしませんでした。
【教訓】
5Sは“手段”であり、目的ではありません。
どんな改善活動も、「それは何のためにやるのか」をまずは明確にしなければ継続も成果も出ません。
大切なのは、目的 → 手段 → 次のアクション の順番を間違えないこと。
これを徹底することで、改善の成功確率は大きく高まります。