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DX化、自働化は万能ではない?

「DX化を推進する」
「ムリ・ムラ・ムダを無くす」
「生産性を向上させる」

どれも正しい言葉ですが、実際にやろうとすると非常に難しいテーマです。

今回は、現場との対立によって変革が失敗した実例をご紹介します。


【事例】
従業員300名の食品会社。

人手不足、原材料・エネルギー費の高騰を背景に、コストダウンの議論が始まりました。

最も効果が出やすい施策として「設備投資」が挙がりましたが、ここで問題が発生します。

それは『自社にとって、”完全最適な設備”は存在しない』ということの見落としです。

多くの場合、導入した設備に合わせて 自社の作業方法や仕様を変更する必要があります。

すると、長年慣れた方法が変わるため、 一時的に生産効率は必ず落ちます。

これは、“経験を積むほど作業時間・コスト・ミスが指数関数的に減っていく”という経験曲線効果がリセットされるためです。

しかしながら経営層はそのことを理解していない。

現場はゼロから覚えるために時間が掛かる。結果として設備投資の成果がでないから経営層は焦る、そしてその原因は現場の努力不足と判断し、退路を断つために人員削減を強行する。すると現場は人が減らされた分、別作業が増えるために、ますます習熟が遅れてしまう。

その結果、生産性がおおきく悪化しました。


このような状況に陥った原因は、経営層が”現状の生産性の裏側を読んでいない”から。

設備メーカーは、例えば「20%削減できた事例」を提示しますが、その20%が自社にも該当するとは限りません。

事例は、もともと改善が全く進んでいなかった企業かもしれません。

逆に、優秀な人材が多く、設備導入の準備が整っていた企業かもしれません。

特に「大手企業での導入実績」は、中小企業とは前提条件がまったく違うため、参考になりません。

ここを読み違えると、現場は混乱します。

「今のやり方で生産性を保てているのに、なぜ必要のない設備を入れるのか?」

こう思われた時点で、現場は積極的に使おうとしません。



そこで私は設備投資の際、必ず以下の2点を徹底しました。

1点目は、現場の理解と納得を得ることです。
使うのは現場です。納得していない設備は、積極的に活用されません。

2点目は、経営層には「成果が出るまで時間がかかること」を説明することです。
経験曲線効果を踏まえ、短期で成果を求めると逆効果になることを伝えました。


(私は提案者ではなくオブザーバーの立場でしたが)結果として、このスタンスで関わった案件で大きな失敗はありませんでした。

一方、「導入した実績をアピールしたいだけの人」や「メーカーの数字を鵜呑みにして試算表を作った人」は軒並み苦戦し、後から数字を取り繕う動きが見られました。


【教訓】
DX化・自働化は業務改善に必要です。
成功すれば生産性は飛躍的に向上します。

しかし、それを扱うのは人です。
人が納得しなければDXは進みません。

たとえばパソコン。
紙に書き慣れた人が、いきなりタイピングすると時間が、いまの倍以上かかるかもしれません。

仮に業務が、現場作業+報告書作成であり、報告書作成に”ペンなら1時間”、”タイピングなら2時間”といった時間がかかるなら、誰もタイピングを覚えようとするはずもありません。それならば現場作業した方がましです。

新システムも同じです。
月1回しか使わないなら、前回の記憶はリセットされ、毎回ゼロからのスタートになります。結果として、「現場では使えないから、事務方が一括入力する」という本末転倒な状態が起きます。


時代の変化についていけない企業は取り残されます。一方で、現場には経験曲線効果が働き、今の生産性があります。新しい仕組みを覚えるには時間が必要になります。したがって、年齢や習熟度に応じて、若手や次期リーダーに任せる配慮も必要になります。

つまり
『DX化・自働化は“人の理解と成長速度”を踏まえて進めること』

これが、失敗しない変革の絶対条件になります。

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