Bー2.損益計算書
- 2025年7月30日
- 読了時間: 12分
更新日:2025年10月4日

『損益計算書』について解説します
損益計算書は企業の一定期間における収益と費用を記した財務諸表の一つになります。企業の成績表とも言われ「収益性」が把握できます。家庭では「家計簿」がそれにあたります。ここでは家庭でも活用できる損益計算書の作成方法について解説します。
1.損益計算書のパターン
売上高(収入)
企業では『本業において商品やサービスなどの提供により得た収益』、家庭では『本業において企業から支払われた収入(ここでは給与の手取り額)』
売上原価(食費)
企業では『提供する商品やサービスに直接要した費用』、家庭では『労働に直接要した費用(ここではエネルギー源となる食費)』
総利益(-)
企業では『売上高から売上原価を減算した利益』
販売費および一般管理費(生活費)
企業では『販売、管理業務で発生した費用』、家庭では『食費を除く生活に要した費用』
営業利益(貯金①)
企業では『本業での獲得利益。売上高から売上原価と販売費および一般管理費を減算した利益』、家庭では『本業での獲得利益。収入から食費と生活費を減算した利益』
営業外収益、営業外費用(恒常収入、恒常支出)
企業では『本業以外で継続的に得られる少額な収益と費用(損益への影響小)』、家庭では『本業以外で継続的に得られる少額な収入と支出』
経常利益(貯金②)
企業では『営業利益から営業外収益および営業外費用を加減算した利益』、家庭では『貯金①から恒常収入および恒常支出を加減算した利益』
特別利益、特別損失(臨時収入、臨時支出)
企業では『本業以外で一時的に得られる高額な収益と費用(損益への影響大)』、家庭では『本業以外で一時的に得られる高額な収入と支出』
税引き前当期純利益(-)
企業では『経常利益から特別利益および特別損失を加減算した利益』
税金(-)
企業では『法人税、住民税、事業税など利益に応じ国に納める税金』、家庭では収入の段階で既に減算済み
当期純利益(貯金③)
企業では『企業が一定期間に得た利益』、家庭では『貯金②から臨時収入および臨時支出を加減算した利益』
上記の黄色枠カッコ内は家庭で言うところの例であり、また解説は、あくまでもイメージです(実際にこのような言葉や決まりがあるわけではありません)。
特に食費を売上原価として考えるか否かは賛否があると思います。
食費は生活費に占める割合が高い上、購入した食材や調味料を1度の調理ですべて使い切ることはなく、残ったものは翌日に回す、あるいは冷凍して保管する、賞味期限が長い材料は安いときに買って在庫としてストックしておくなど、あたかも製造原価に近い感覚があります。
また食費は労働する上での必要なエネルギー源とも言えますので「食費=労働に直接費やす費用」と解釈し、ここでは売上原価に挙げました。
いずれにせよ、今回の記事は決算書を目にする機会がある人にとっては損益計算書を私生活に置き換えてみることで理解しやすくなるのではないかとの想いで比較しています。
「このような考え方もあるのだなぁ」という温かい目で読んでもらえればと思います。
2.評価指標(代表例)
原価率
(売上原価/売上高)✕100%
できるだけ低い割合にすることが望まれます。
経費は変動費と固定費に分けることができ、原価は変動費要素が強いものになります。
変動費は売上高(販売)に比例して高まりますので、単位当たりの原価を下げることができれば、利益も売上高に比例して高まることになります。
ゆえに「売上高に占める割合が高い原価をどうやって下げていくか?」を優先課題に掲げ、削減を進めることが定石になります。
経費率(販管費率)
(経費/売上高)✕100%
できるだけ低い割合にすることが望まれます。
経費は変動費と固定費に分けることができ、経費は固定費要素が強いものになります。
基本的に固定費は精神論だけで下げることはできません。
固定費を下げるためには、まずは無駄が無いかどうか見直し、次に設備更新やDXを活用した業務改善などへの投資を行います。
現場の意見を聞かずに経費削減や人員削減がトップダウンで進められるケースを目にします。
実際に現場に無駄な業務や経費があることは否定しませんが、それらを無くすことで全てがうまくいくかと言えばそうとも言い切れません。
かえって現場のモチベーションが下がり生産性が下がってしまう危険性もあります。
そうなってしまうと本末転倒です。
また、企業の付加価値には、「営業利益」だけではなく、雇用に関する「人件費」や地域企業との取引に関する「減価償却費(投資費用)」も含まれます。
ゆえに、投資無くして固定費を下げようとするならば「経費に占める割合が高い費用をどうやって下げていくか?」を現場の理解と納得を得た上で進めることが定石になります。
売上高営業利益率
(営業利益/売上高)✕100%
できるだけ高い割合にすることが望まれます。
最終的な利益は税引き後の当期純利益になりますので、節税対策や副次的な収入確保などへの取り組みも大切ではありますが、それ以上に本業における安定収入が何よりも大切になります。
本業における利益は営業利益です。
原価と経費の見直しを行うこと以外に「どうやって販売単価を上げるか?」あるいは「どうやって販売数量を増やしていくか?」を優先課題に掲げ、販売戦略を立案することが定石になります。
3.損益計算書について
(企業の場合)
例えば自社がカフェを経営している場合、損益計算書は下記の通りになります。

(企業の損益計算書)
コーヒーの販売により年間2,375万円の「売上高」があります。
コーヒーを提供するためにはコーヒー豆と天然水が必要になります。
ここではそれを「売上原価」(775万円)として売上高から減算します。
このときの利益が「総利益」(1,600万円)になります。
カフェを経営するためには人件費や水道光熱費、消耗品などが必要になります。
それらを「販売費および一般管理費」(1,271万円)として総利益から減算します。
このときの利益が「営業利益」(329万円)になります。
同社は閉店後の夜間、カフェの駐車場を近所の住人に貸しており本業とは別の収入を得ています。
その収入は「営業外収益」(6万円)として営業利益に加算します。
また秘伝のオリジナルコーヒーは季節ごとにレシピを変えており、それら変更に伴うチラシや原材料をシーズン毎に廃棄しています。
その支出は「営業外費用」(3万円)として営業利益から減算します。
このときの利益が「経常利益」(332万円)になります。
通常月に発生することはありませんが、今期は顧客が破損した調度品の損害に対する保険収入がありました。
その収入は「特別利益」(7万円)として経常利益に加算します。
またスペースを確保する目的で古くなった焙煎機を売却したところ資産価値より低い価格でしか売れませんでした。
その支出は「特別損失」(10万円)として経常利益から減算します。
このときの利益が「税引き前当期純利益」(329万円)になります。
そこから「税金」(115万円 ここでは実効税率35%として試算)を減算した214万円が「当期純利益」、つまり企業の余剰になります。
同社の損益計算書を評価指標で示すと下記になります。

(企業の評価指標)
原価率は33%で、こだわりのコーヒー豆が大半を占めています。
水道水を利用すれば原価を下げることも可能ですが、コーヒー豆の産地に適した世界各地の天然水を利用していることもあり、原価の約15%を天然水が占めています。
経費率は54%と原価率よりも高い割合になっています。
うち人件費が35%、次いで価償却費が6%、租税公課が4%を占めています。
仮に経費を下げるならば、経費率の高いこれら費用を下げることから始めますが「ケチケチした節約」は禁物です。
例えば人件費を削減しようと精神論で無理やり雇用人数を減らし、これまで2人で行っていた業務を1人で対応させようとすると従業員の不満や無理が生じ、品質やサービスの低下が起こり、結果として顧客離れを招く可能性があります。
投資無くして効率的な固定費の削減はできません。
例えば、コーヒーの注文や提供、レジ支払いなどに設備投資することによって作業を機械化(自働化)させる、あるいは報酬アップ、福利厚生の充実、コミュニケーションの活性化など、職場環境の改善に投資することによって従業員のモチベーションを上げることで生産効率を高めていくことが必要になります。
(家庭の場合)
例えばA氏(妻、小学生2人の4人家族)の家計簿を損益計算書に置き換えると下記になります。

(家庭の損益計算書)
会社員A氏には年間384万円の「収入(手取り)」があります。
働くためには「食費」が必要になります。
ここではそれを企業の損益計算書で示される「売上原価」(102万円)として収入から減算します。
生活するためには家賃や水道光熱費、娯楽費、通信費などが必要になります。
それらを「生活費」(246万円)として収入からさらに減算します。
この時の利益が「貯金①」(36万円)であり、収入から、毎月、必要になる費用を減算した余剰になります。
A氏は1年前、友人に10万円を貸しました。
返済は月割りとし、毎月もらい、また携帯アプリでポイントも稼いでいます。
それらは本業以外で得られる定期的な収入という意味で「恒常収入」(8万円)を貯金①に加算します。
一方で誕生日やクリスマスなど年間イベントで定期的に支出するものは「恒常支出」(12万円)として貯金①から減算します。
この時の利益が「貯金②」(32万円)であり、貯金①に本業以外で得られる収入と毎年、必要になる費用を加減算した余剰になります。
上記のほか、今年度は、宝くじの当選金や祝儀など本業以外で、かつ偶発的な収入がありました。
その収入は「臨時収入」(2万円)として貯金②に加算します。
その一方で、今年度は、自動車の故障や知人の香典、親戚間の祝儀など偶発的な支出がありました。
その支出は「臨時支出」(25万円)として貯金②から減算します。
貯金②に本業以外で偶発的に得られる収入と偶発的に支出する費用を加減算した時の利益が「貯金③」(9万円)、つまり家庭の余剰になります。
なお税金に関しては、収入の段階で減算済みですので考慮する必要はありませんが、自動車や家を保有している際は、自動車税や固定資産税などの税金が発生します。
それらについては便宜上、「恒常支出」で減算することにします。
ちなみに、ここまでの解説で「恒常収入」「恒常支出」「臨時収入」「臨時支出」など、聞きなれない造語を引用しましたが、それらについては下記の通り定義することにします。

(恒常、臨時についてのイメージ)
会社員A氏の損益計算書を評価指標で示すと下記になります。

(家庭の評価指標イメージ)
食費率は27%で費用のなかで最も高い金額、割合になっています。
経費率は64%であり、食費率と合わせると、収入の90%強がその月のうちに支出されていることになります。
うち家賃が23%、水道光熱費が8%、教育費が6%を占めています。
家賃は経費の中で最も高い割合を占めていますが、引っ越しをする以外に下げることはできません。
一方で日常生活に影響しない”ぜいたく品”である娯楽費を減らすことを考える方もいらっしゃるかもしれません。
娯楽費は日常生活に影響しないとは言え、ストレス発散と言う点では必要になりますし、経費割合から判断しても低いことから優先順位は低いと考えます。
従って、費用割合が高く、かつ工夫次第で減らすことができる水道光熱費や教育費を中心に削減を考えることが必要になります。
4.売上原価(食費)について
本業において提供する商品やサービスに直接費やした代金を「売上原価」と定義しました。
ここで今一度”直接費やした”とはどういうことか解説します。
例えば原材料を購入するために900円/袋を支払ったとします。
購入した原材料は1/3袋しか使用しなかった(原材料1/3袋分しか販売できなかった)場合、販売した商品に直接費やした代金は300円になり、これが売上原価になります。
ちなみに残り2/3袋分は月末在庫(資産)として社内に残ることになります。
先のカフェ経営を例に解説すると、コーヒー豆を当月900円分購入したものの、300円分しか使わなかった場合の原価は300円、月末在庫は600円になります。
そして月末在庫の600円分は次の月に繰り越されることになります(下図の”当月”)。
また次月も同じ数量しか販売できないと予想した場合は繰越在庫600円で賄うことができますので、当月はコーヒー豆を購入する必要はありません。
従って、当月購入は0円、月末在庫は300円になります(下図の”次月”)。
次々月は休みが多いことから例月以上の販売になると予測し、900円分のコーヒー豆を購入しました。
しかしながら結果として前月、前々月同様の販売数量であったため、新たに購入した1袋分は使用する必要がなく、丸々、次の月に繰り越しました(下図の”次々月”)。

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