Dー10.ナッジ理論
- 2025年5月26日
- 読了時間: 6分
更新日:2025年11月8日

『ナッジ理論』について解説します
たとえ自分が間違っていたとしても、ヒトは他人から注意されると嫌な思いになり、時として反発することがあります。ナッジ理論は、ヒトの心理や行動パターンをうまく活用して、その人に注意しなくても、自然にこちらが望む選択へと誘導する手法になります。ここでは、ナッジ理論とその発想力を高めるためのラテラルシンキングについて解説します。
1.ナッジ理論
ヒトの心理や行動パターンをうまく活用して、その人に注意しなくても、自然にこちらが望む選択へと誘導する手法になります。
ナッジ理論には、人間の心理を突いて行動させるためのフレームワーク”EAST”があります。
EASY:その行動をできるだけ簡単にすること
ATTRACTIVE:その行動を魅力的に見せること
SOCIAL:その行動が社会的に受け入れられていること
TIMELY:その行動を実施するタイミングが適切であること
要するに『社会的に是認される行為に対しては、自分にメリットがあり、かつ簡単であれば、その通りに行動する』と個人的に理解しています。
”ゴミのポイ捨て”を例に考えてみます。
「ゴミをすぐに捨てたい」と思っている人は、たとえポイ捨てが社会的に非とされる行為だと知っていても、自分のメリット、欲求(=魅力)を優先させると、ゴミをポイ捨てします。
街には、公共のゴミ箱を設置しているところもありますので、そこまで行って、ゴミを捨てれば良いだけの話ですが、探すことや歩く手間を考えると簡単ではないですし、すぐに捨てられません。
一般的に、”ゴミをポイ捨てしないこと”は、社会的に受け入れられる行動になりますので、ナッジ理論を活用すれば、”すぐに捨てたい”という欲求が、簡単に解決できる(=メリットがある)のであれば、ポイ捨ては無くなると考えられます。
従って、ゴミ箱の数を増やす(=歩く手間を省く)、ゴミ箱の設置場所がわかるよう目立つ色にする(=探す手間を省く)、ゴミ箱設置マップを掲示する(=探す手間を省く) などの対策を講じることでポイ捨てを減らすことができると言えます。
このような対策を提案すると、「そもそも、ポイ捨てしないことが社会のマナー。街としては随所にゴミ箱を設定してるため、その数を増やさなくても、マナーが守れない人には罰金を科せばよい」との声が聞こえてきそうです。
確かにその通りだと思います。
ゴミ箱を増やすと維持費がかかりますし、ゴミ箱を全て撤去し、ポイ捨てした人から罰金をとれば街の収入にもなり、ケースによってはルールが守れない人は街を出ていき、街中はきれいになっていくかもしれません。
・・・でも、ルールで縛られる街は、住みやすいと言えるのでしょうか?
禁止事項を増やし、違反者に罰を与えるという、強制力でルールを守らせようとするとお互いの関係性を悪くし、ルールを守らなければならないというプレッシャーがストレス要因になる危険性があります。
従って、強制力でルールを守らせる前に、守らない側の心理を考え、その人たちが自主的に協力してくれるための方法を考えることも必要であるということです。
ナッジ理論を活用したゴミのポイ捨て対策の実例としては、”バスケットゴール型ゴミ箱”や”投票型灰皿”、”ありがとうゴミ箱”などがあります。
また、ゴミのポイ捨て対策以外の街の美化活動の一環としては、”小便器の的シール”や”立小便防止の鳥居”などがあり、いずれも斬新なアイデアに富んでいます。
これらに共通するポイントは、凝り固まった固定観念、パターン化された思考から離れた”発想力”であり、この発想力を磨くための思考法として”ラテラルシンキング”があります。
2.ラテラルシンキング
人は生まれ育った環境や自身の経験に基づいて物事を判断しています。
それらがパターン化された思考となり、結果として新たな発想が生まれ難い状況を作り上げてしまっています。
「年を取ると融通が利かず、頑固になる」という話をよく耳にします。
ほんとうに年齢が原因かどうかはわかりませんが、私の経験上では、「自己防衛の感情」がそうさせているのではないかと思っています。
プライドが高い人、年功序列にこだわる人、役職に執着する人は、自分の価値観や間違いを認めることは負けに繋がると思っているようで、自分の考え以外は認めようとはしませんし、意見すら聞こうともしません。
そのような凝り固まった固定観念が新たな発想を生まれ難くしている可能性があります。
従って、何かを検討する、あるいは結論を出した際は、改めて以下の3原則について再思考する習慣を身につけることをお奨めします。
ラテラルシンキング3つの基本原則
前提や固定概念を疑う
本当に正しいのか?ほかに選択肢はないか?
メタ思考(抽象化)
類似ケースは無いか?共通するものはないか?
セレンディピティ(偶然から価値を見つける力)
ほかに何か得られないか?
さきほどの”ゴミのポイ捨て”を例に再思考してみます。
【前提や固定概念を疑う】
ゴミのポイ捨ては本当に悪いことなのか?
ゴミのポイ捨てで街が汚れてしまうのであれば、掃除をすればよいだけなので、掃除業者の雇用創出に繋がる可能性がありますし、ポイ捨てされたゴミ以外の掃除も行渡るため、かえって街がきれいになるかもしれません。
ゴミ箱の設置数を増やすことは本当に維持費が高くなることに繋がるのか?
現在の回収方法を続ける限りは、ゴミ箱の設置数に比例して経費が増える可能性は高まりますが、そもそも、ゴミの回収方法を変えてみること、例えば、ゴミ箱自体が真夜中に一定場所まで自動で持ってくるようにできれば、現在の回収よりも楽ですし、コストもかからなくなるかもしれません。
ゴミが出ないような工夫は考えられないか?
街を散策し、歩き食べするケースでは、包装容器がゴミになっていますので、包装容器も喫食できるタイプ、例えばアイスクリームのようなコーンに変更して販売する、ドリンクであれば、持参した水筒に購入量分の飲料が供給できる販売方法にすれば、ゴミ箱すら不要になるかもしれません。
【メタ思考(抽象化)】
ゴミ箱が増えると、ゴミの回収頻度が増えますが、このような回収をしているケースとして何が考えられるか?
同じようなケースとしては、郵便ポストや自動販売機の商品補充が考えられます。
従って、郵便配達や商品補充のコスト削減策を参考にすると、現状よりも効率的な回収方法が見つかるかもしれません。
【セレンディピティ(偶然から価値を見つける力)】
ゴミの回収とは全く異なる業種のアイデアを得ることで新たな気づき得られる可能性が高まります。
製造業出身者ならば、「ゴミ箱間を自動搬送コンベアで繋ぎ、ゴミを”センターゴミ箱”に集約させる」ことを考えるかもしれません。
技術開発出身者ならば、「深夜の人通りが少なくなる時間帯にロボットが自動搬送する」仕組みを考えるかもしれません。
化学研究出身者ならば、「回収せずに、ゴミ箱内で処理させる」ことを考えるかもしれません。
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