5Sは不要?~手段が目的化した瞬間に、改善は止まる~7月30日読了時間: 6分「まずは5Sから始めましょう。」多くの会社で、当たり前のように聞こえてくる言葉です。現場はその言葉を信じて、棚を作り、ラベルを貼り、モノの位置を決め、毎朝の清掃を徹底します。一生懸命に、丁寧に、真面目に取り組みます。しかしながら、「5Sをやって本当に改善した」 という声を聞くことはほとんどありません。それはなぜなのか?理由はとても簡単、5Sは手段であって、目的ではないからです。今回は、手段が目的化してしまう失敗例について解説します。 5Sを頑張っても成果が出ない現場の共通点ある工場で、担当者が誇らしげに言いました。「探す時間が10分から1分になりました。大きな改善です。」確かに、見た目はきれいになっています。棚も整い、道具も揃い、ラベルも貼られ、気持ちよく仕事ができるようになっています。しかし、私はその現場を見て、こう感じました。「この改善は、生産性にほとんど寄与していない」と。なぜなら、その工場の作業は秒単位で動いていないからです。作業が秒単位で動いていないのならば、仮に探す時間が仮に10分から1分になったとしてもラインが止まることはありません。ラインが止まらなければ損失はゼロ。 損失がゼロなら、改善効果もゼロ。これが、5Sを頑張っても成果が出ない理由です。 5Sは改善の先か?後か?5Sは、作業性が高まった状態でこそ真価を発揮します。・・・こういった主張をすると、必ずと言っていいほどこう言われます。「全ての土台は5Sから。5Sができない会社に改善はできない。」これは、まさに 「卵が先か、鶏が先か」 の議論と同じです。確かに、5Sができている会社は改善が進みやすいのですが、だからといって「5Sが改善の土台である」とは言い切れません。というのも、5Sができている会社は、その目的や重要性が作業者に十分理解されているからこそ進むのであり、無理やり、かたちだけで5Sを進めたところで、改善そのものが生まれることはないからです。したがって、5Sがなかなか進まない会社では、“構造(しくみ)”で対応することが重要になってきます。まずは、”目に見える”大きな問題点を解決させることで、作業の流れを整えていきます。これによって作業性は高まっていきますが、それと同時に”目に見える”改善ネタはどんどんなくなっていきます。ムダが全く無いという現場はありません。継続的改善を進めていくためには、次に”目に見えない”小さな問題点を見つけ、解決させることが必要になってきますが、この段階になってはじめて、「移動」「探す」といったムダが目に付くようになり、それらを排除するための検討、つまり5Sが始まります。ステップ1:作業の流れを整える(現状把握する)ステップ2:ムダを見える化する(おおきな課題を抽出する)ステップ3:作業の効率化が期待できるおおきな課題に取り組むスタップ4:作業の効率化をさらに進めるために小さな課題も見つける(5Sに取り組む) 『B to C』では5Sそのものが“価値”になるここまで述べたのは、工場や裏方のように 生産性が評価軸となる現場の話になります。飲食店や小売店など、消費者が直接訪れる所謂『B to C』の世界では話が変わってきます。というのも、消費者は、商品やサービスだけではなく、店の雰囲気そのものを評価するからです。例えば、散らかった店舗は「だらしない」と感じ、 汚れた飲食店は、たとえ安全でおいしくても“見た目”だけで敬遠します。つまり、飲食店や小売店と言った『B to C』では、見た目(イメージ)が非常に重要になってきますので、例え”かたち”だけであっても、5Sそのものが価値になります(=5Sを目的化しても問題ありません)。 むしろ必要になってきます。 「トイレがきれいな工場は信頼できる」という言葉の本質一般的に「トイレがきれいな工場は信頼できる」という言葉を耳にします。 また、「挨拶ができる工場はしっかりしている」という言葉も耳にします。こういった表面上の、言葉を真に受け、無理やり、トイレをきれいにしたり、従業員に挨拶するよう指導する管理者もいますが、これも本末転倒。手段の目的化に陥ってしまっています。トイレは誰も掃除したくない場所です。それでもきれいに保たれているということは、・嫌がることでもきちんとやる人がいる・次に使う人のことを考えて行動できる人がいるという“人の質”の表れになります。信頼されるのは、トイレがきれいだからではなく、トイレをきれいにできる人がいる、その環境があるということになります。また、挨拶に関しても同様に、挨拶を“仕事としてやらされている”のではなく、 “人として自然にできている”ことにこそ価値があります。お客さんが来たときに挨拶できることが素晴らしいのではなく、 挨拶できる人が育っている環境が素晴らしい。トイレ清掃も挨拶も5Sも、 本来は“結果として現れる良い状態”です。それを目的化した瞬間に、 本質的な価値は失われます。 手段が目的化した瞬間に、改善は止まる(仕事も生活も同じ)5Sをやることが目的になってしまうと、 現場は「片付けた=改善した」と錯覚しますが、改善とは「見た目」ではなく「流れ」を整えることに本質があります。流れが整い、作業性が高まり、その結果として5Sが効く・・・これは、仕事でも生活でも同じです。例えば、「片付けてもすぐに散らかる」「挨拶がかたちだけになる」「トイレ掃除が義務になる」・・・ 目的が手段化している状態に陥っているかもしれません。かたちだけ進めても効果はありません。本質はどこにあるのか?そこを考えることが大切になってきます。 まとめ5Sは、目的ではなく、手段になります。したがって、号令をかけて、無理やり実施するのではなく、自然とその必要性に気付かせ、定着させていくためには、まずは目に見える問題点を潰し、作業性が高くなった段階で、次に取り組む改善ネタとして実施していくことをお薦めします。しかしながら、飲食店や小売店と言った『B to C』では、消費者に与える印象が購買意欲を高める極めて重要な要素にもなり得ますので、強制的に5Sを進めることも否定はしません。ただし、5Sは、トイレ清掃や挨拶と同じように、根本的には“人の質”が表面化した結果になります。手段が目的化した瞬間に改善はストップしてしまいます。大切なことは、手段の目的化に陥ることで5Sの本質を見失わせないようにすること。「5Sをやっているのに成果が出ない」 と悩む現場は、この状況に陥っている可能性がありますので、改めて、 改善の順番が間違っていないか?改めて注意していただきますと幸甚に存じます。
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