Eー3.管理運営ルール(体制)を策定すること
- 2025年4月28日
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『管理運営ルール(体制)の策定』について解説します
安全管理には、経営(=安定経営)、品質(=品質安全)、食品(=食品安全)、労働(=労働安全)、環境(=環境保全)など様々な”安全”があります。それら各テーマに関しては、ISOや行政、業界団体などで規格化(ガイドライン)されていますので、そちらを参考にしていただければ問題ありません。ここでは、共通する内容についてご紹介します。
1.管理運営ルール(体制)の文書化
以下に記載した内容は、管理運営ルールとして文書化します。
1.経営トップによる表明
経営トップは、安全に関する考え方を方針として従業員に示します。
【注意事項】
経営トップが事務局に方針を考えさせ、それをポスターにするだけのケースもあります。
署名している以上、経営トップの表明ということにはなりますが、このような方針は活動を続けるにつれて”体裁を整えただけの方針”と従業員に気付かれてしまい、いずれ形骸化していきます。
経営トップが自らの声、表情で安全に関する熱い想いを全従業員に感じ取ってもらわなければ意味がありません。
2.リスク分析に関する事項
実施者のバラツキが無くなるよう実施頻度や評価基準などの評価方法をルール化します。
【注意事項】
リスク分析は、1回実施しただけでは必ず抜けや漏れが発生しますので、定期的に何回も行うようにします。
特に、4M(ヒト、原材料、機械設備、方法)変動が発生した時や3H(はじめて、変更、久しぶり)のタイミングでは新たなリスクが発生しやすくなりますので注意が必要です。
一般的にリスク評価は、発生頻度と重篤性で判定を行いますが、発生頻度や重篤性を人の感性に頼ってしまうと評価者毎のバラツキがでやすくなりますので、得点形式で評価するようにします。
それでもバラツキが発生するようであれば、実施者の評価者訓練を行うことも必要になります。
3.作業手順、機械設備の点検に関する事項
リスク分析の結果、”高リスク”と判定された作業に対しては必ず手順書を作成します。
その他、法令で求められる定期点検に関しても手順書やスケジュールを一覧化します。
【注意事項】
手順書が形骸化し、現場と実態が異なっているケースが多くあります。
そもそも、手順書の作成は時間や手間が掛かるめんどくさい作業になりますので、内容が適当になりやすく、また内容に変更があっても、その情報はすでに担当者の頭のなかに入っていることから、更新が疎かになりやすく、結果として形骸化する傾向があります。
手順書は、新規採用者への教育、事故・トラブルの未然防止、事故・トラブル発生時の証跡(自分たちの正当性)に役立ちます。
手順書を紙ベースで作成・更新することがめんどくさいのであれば、現場を動画撮影し、それを手順書にしてしまえば、作成・更新は楽になります。
4.教育訓練、資格に関する事項
作業手順、機械設備等の点検を適切に行うための必要な教育訓練、資格を一覧化します。
資格に関しては、更新が必要なものもありますので、一覧表を作成する際は、資格取得年、更新状況まで記載するようにします。
【注意事項】
事故・トラブルは雇い入れ時、配置転換時に発生しやすいので、必ず手順書に基づく教育訓練を実施します。
ちなみに、作業を行えるようにすることだけが教育訓練の目的ではありません。
例えば、安全管理するうえでは従業員の健康も大切になりますので、健康指導も重要な教育訓練と言えます。
行政や業界団体は年に数回、業務に直接関係しない交通安全や防災、ハラスメント防止など、様々な安全週間(月間)を設定していますが、それらも従業員の命を守るための重要な教育訓練と言えます。
「うちは手順書をつくるほど複雑な作業はない」との声を聞くこともありますが、上記はすべて必要な教育訓練です。
経営資源として求められる”ヒト”は、単に作業できる人間ではなく、その企業にふさわしい人間を指しています。
SNSで頻繁に目にする所謂”バイトテロ”。
これは企業の一員としての自覚(=教育訓練)が足りなかった結果と言えるのではないでしょうか?
従って、技術だけではなく、企業の一員として恥ずかしくない振舞いやモラルも身につける、そのために必要な教育を選定することが必要になります。
5.工場巡視に関する事項
各職場に気づきを与えることを目的に第三者による巡視をおこないます。
巡視をおこなう際は、事前に実施頻度や実施エリア、実施者(経営トップや安全責任者、職場管理者)など、各巡視の役割や計画を明確にしておきます。
【注意事項】
職場担当者は、自分たちの職場に不安全行動や不安全状態は”無い”と考えているはずです(”ある”と思って作業していれば大問題です)。
しかしながら、実際には、その職場を知らない人が見ると、安全を脅かすような行動や状態に気付くことが多々あります。
これは、同じ環境で同じ作業を繰り返していると”慣れ”によって視野が狭まってしまっていることが原因と考えられます。
従って、普段、その職場を知らない人がそのことに気付かせてあげることが大切になります。
第三者と職場担当者が管理基準通りにできているか改めて一緒にチェックすることで、忘れていたルールを思い出すきっかけにも繋がります。
巡視には、”管理基準通りできているか?(=現行の管理基準でリスクが低減できているか?)”、”リスクは潜んでいないか(=現行の管理基準に抜けや漏れはないか?)”の2つの目的があります。
前者は顕在リスク、後者は潜在リスクを低減させるための取り組みと言えます。
従って、漫然と工場巡視しても無意味であり、目的を明確にしたうえでチェックリストに基づくチェックをおこなうようにします。
なお、チェックリストは一度実施した結果である”点”にすぎません。
その””点”と”点”を”線”で結んで傾向を分析していくことが大切であり、そのためには各チェックリストを記録し、分析評価していくことも必要になります。
6.委員会に関する事項(管理体制図の作成)
安全活動の報・連・相の場として委員会を設置します。
【注意事項】
委員会を設置する際は、メンバーや開催頻度、議事内容(各企業の問題が解決できる内容)を予め決めておきます。
たまに、委員会メンバーや議事内容を固定しているケースもありますが、それはマンネリ化の元です。
委員会を開催することが目的ではありません。
問題解決、すなわちアウトプットの量が委員会の成功と失敗を決めます。
現在抱えている問題は何か?そこをメンバーで共有し意見交換することが大切です。
従って、積極的に参加していないメンバーがいれば、指導する、メンバー変更するなど、マンネリ化を打破するための対策が必要になります。
7.報・連・相の連絡事項
現場から得られた情報は、必ず委員会(管理者)へインプットし、委員会での情報は必ず、各職場へアウトプットします。
【注意事項】
職場担当者と管理者との情報連絡の場として、朝礼や昼礼、終礼の他、月例会を活用します。
情報が挙がってこない、また情報が届かないという声もよく耳にしますが、”話し難い職場(人間関係)”が原因になっているケースもありますので、管理者は話しやすい職場環境、雰囲気を作る必要があります。
また何でもかんでも報告が挙がってくると管理者は聞くだけで精一杯というケースもでてきますので、報告すべき事項も決めておく必要があります。
ちなみに、報告すべき事項(優先順位の高い報告事項)を決める際も、現状分析したうえで点数評価し、また報告すべき事項を報告するタイミング、頻度も同時に決めると情報連絡が滞らなくなります。
8.事故・トラブル発生時の対応事項
事故・トラブルは必ず発生します。
従って、発生した際に迅速な対応ができるよう必要な事項を予め決めておきます。
【注意事項】
場合によっては、行政や得意先、関係機関に届け出なければならないケースもありますので、緊急連絡網(≒BCP)を作成します。
また緊急連絡網が最適であるかどうか?、きちんとルールが理解されているかどうか?などを確認する目的で、定期的な緊急時対応訓練を実施します。
たまに、緊急連絡網を定め、訓練を実施しても、個々人が勝手に動くケースがありますが、これは緊急時対応訓練が機能していない証拠といえますので、現実的な対応手順への見直し、リアルな訓練を実施していく必要があります。
2.文書・記録の策定
文書・記録は自分たちが管理運営ルールをつくり、それを遵守していることを示す証跡であり、特に事故・トラブル発生時に役立ちます。
だからと言って、あれもこれもと文書・記録を増やすとメンテナンスや記録記入、チェックに時間がかかり、現場の負担になりかねません。
概ね、下記の文書、記録があれば大丈夫です。
文書類
安全管理体制図、図面(ヒト、モノの流れ、機械設備配置図)、ハザード・リスク一覧表、フローダイアグラム(作業一覧)、機械設備一覧、安全マニュアル、各種手順書、安全活動年間スケジュール(教育計画、点検含む)、有資格者一覧 |
記録類
リスクアセスメント評価表、各種作業記録、各種点検記録、例会メモ(朝礼などの記録)、教育記録(KY実施記録)、工場巡視記録、委員会議事録、事故報告書、事故発生状況一覧、健康診断結果(集団分析) |
3.管理運営ルール(体制)づくりの進め方
概ね、下記の通りです。

(管理運営ルール(体制)づくりの進め方)
基本は『現状分析 ⇨ リスク分析 ⇨ 対策の立案 ⇨ 実施 ⇨ 検証 ⇨ 再実施』というPDCAサイクルを回すことです。
PDCAサイクルについては別の記事で詳しく記載しています。
※テーマが異なるだけで、手段方法は同じです。
4.どこまで現状分析(標準化)するか?
管理運営ルール(体制)をつくるためには、計画段階が極めて重要になってきます。
しかしながら、あまり計画に時間をかけ過ぎてしまうと、実施がどんどん遅れてしまいます。
現状分析した経験がある方はお分かりかと思いますが、計画の最終段階になってから「このケースがある」「あれもあった」と追加していくと、完璧を求めるあまり、そこから抜け出せなくなりますし、特に短時間で現状分析を進めようとすると視野が狭くなりますので、正しい判断ができなくなります。
従って、まずは実施段階に移すことを最優先に考えます。
完璧な管理運営ルール(体制)はありません。
だからこそ、その不備を見つけるための『検証』を行い、管理運営ルール(体制)を見直し『再実施』しています。
このサイクルがしっかり回るのであれば、多少不備があっても、サイクルが回るにつれ、完成度は高まっていきます。
そこを目指して取り組んでください。
ちなみに、現状分析は”工程単位”ではなく”動作単位”にまで及んだ方が抜けや漏れが無くなりますが、分析にかなり時間がかかりますので、まずは『工程』で分析し、必要に応じ”作業単位”や”動作単位”にまで落とし込んでいくことをお薦めします。

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